顧客サポートチーム用SLAの設定ガイド
SLAを順守するために必要な時間を適切に決定する際には、うまくバランスを取ることが重要です。即答を約束したいのはもちろんですが、これは顧客へ対する約束としては現実的ではありません。回答時間について過大な約束をし、それが達成できない場合には、顧客を落胆させることになり、さらには罰金、利用クレジットの提供または契約の解除など、法的かつ重大な結果へと繋がる恐れがあります。
その一方で、顧客にとってSLAは、サポートが必要になる可能性がある場合や、実際に必要になったときに、タイムリーな回答を得ることができるという安心材料となります。目標を高く設定し過ぎると、回答がすぐに来ないことに顧客はがっかりしてしまいます。約束が少し大げさであっても、それでも顧客のニーズを満たすことができるという、そのバランスを見い出してください。これはSLAポリシーを顧客セグメントに合わせ個々に設定することで実現可能です。SLAチームポリシーを設定する際に考慮すべきことを6つご紹介します。
SLAはサポートチームの目標と合致しているべきか?
SLAは、顧客へ対する約束事です。企業規模が小さく、契約または法的拘束力のあるSLAを提供していない場合、あなたの企業におけるSLAは、顧客サポートチームが回答および解決時間として設定した社内目標と同様であるかもしれません。
しかし、サービス利用規約内または法的な取り決めにおいてSLAを設定している場合には、違反した際に重大な影響が及びます。顧客サポートチームの目標が、最低限のサービスレベルを満たすだけのものであってはなりません。この場合には、SLA違反を避けるためというよりもむしろ、意欲的に目標をより高く設定するべきです。
さらに、内部の目標と同じく、外部SLAを設定してしまうと、ミスが許されなくなってしまいます。SLAの範囲内で問い合わせを解決することを目標とするのが理想です。SLAは、顧客が待つことのできる最長の許容時間であるべきであり、品質を計るためのものであるべきではありません。
常に顧客の期待値を超えることができるよう、顧客サポートチームの回答および解決時間の目標は、SLAよりもかなり下回った値で設定するのが最善です。
顧客セグメントの把握
SLAポリシーを決定する際には、全ての顧客を一緒くたにするか、特定の顧客に対しては別のポリシーを設定するかを考慮することが大切です。契約プランや契約条件に基づき、顧客のニーズを理解することで、より顧客1人1人に合ったサービスを提供することが可能となります。顧客グループを分類する方法には2つあります:
契約プラン別に顧客を分類する
高額な契約プランを利用している顧客は、低額や無料プランの顧客よりも優先順位が高くなるでしょう。無料のユーザーへ対しSLAを設定する必要は必ずしもありませんが、企業顧客へ対しSLAを設定するのは当然ですし、さらには契約交渉において多くの場合必要とされます。
VIP顧客用にカスタマイズしたSLA
高額な契約に対してはしばしば、契約者1人1人に見合ったSLA条件が必要となります。複数のSLAポリシーにより、それぞれの顧客や、起こり得るかもしれないそれぞれの状況に対し、個々に期限を設定します。
よくある問題を分類する
どの顧客が抱える問題ももちろん重要ですが、全てが緊急を要するわけではありません。優先度ごとによくある問題を分類し、質問の種類ごとに個々のSLAを設定することで、顧客のニーズに対し、よりわかりやすく優先順位をつけることが可能になります。例えば、故障時のSLA時間は、請求先住所の変更依頼の物よりもかなり短くなります。複数のSLAを用いることで、様々なタイプの顧客に対し、個別に柔軟かつきめ細かなサポートを提供することが可能になります。
顧客の声に耳を傾ける
SLAポリシーを設定する際は、顧客からのフィードバックを考慮しましょう。顧客が対応の遅さに対し苦情を言っていたり、または満足度が低かった場合には、全ての顧客からのニーズを満たすことができるよう、SLAを再確認するべきです。
なぜ顧客が一定の回答時間を必要としているのかを理解することも重要です。バンキングアプリまたはPOSシステムといった重要性の高いソフトウェアや製品においては、少しの待ち時間でも耐えがたいため、より迅速なSLAが必要となります。Eコマースまたは娯楽用アプリなどの製品では、重要度が下がるため、それほど迅速に回答する必要はないかもしれません-これは、貴重な人員を別のタスクへ割り当てられるということを意味しています。
SLAを順守するための人材配置
エージェントの可用性に合わせてSLAを最適化することは魅力的に思えるかもしれませんが、しかしこれはアプローチとしては間違っています。顧客体験を最優先としたSLAポリシーをベースとし、条件に見合うよう人材を配置します。顧客の満足度を満たすことができず、さらにはSLA違反が発生している場合には、受信する問い合わせに対応するため、さらにエージェントを採用する必要があるということです。
SLAをサポートするためのOLAを設定
内部で連携を取りながら問い合わせを解決する必要がある際、運用レベル合意書は、SLAを継続的に順守するためも大変重要です。以上でも説明した通り、OLAは、ボトルネックを避けるために役立つ、内部チーム間における合意です。SLAが満たされなかったとき、顧客にとってはそれがエンジニア、サポートまたはシステム管理者、誰の責任であるのかは関係ありません。ここで意味を持つのは、合意が尊重されなかったという事実だけです。OLAは、チームが連携を取り、顧客へ対する約束を果たすための手助けとなります。
営業時間または顧客カレンダーに基づいたSLA
24時間年中無休サポートを提供していない場合には、営業時間のみを考慮したSLAの設定が可能です。例えば、24時間以内の回答時間というSLAを設定しているにも関わらず、エージェントが対応しているのは平日のみという場合、金曜日の午後にEメールを送信した顧客が返信を受け取るのは月曜日ということになります。顧客カレンダーに基づいた時間ではなく、営業時間に対しSLAを設定することは、エージェントが業務を行っている間のみSLAが有効となるということです。
しかし、営業時間を用いることで、レポートの内容は良くなるかもしれませんが、顧客は週末の間(または夜間)ずっと返信を待っているということになります。対応できるエージェントがいるかどうかなどは顧客には関係ありません-サポートを受けていない、という事実だけが認識されてしまうのです。営業時間のSLAに関するレポートのみを選択している場合でも、異なるタイムゾーンに住んでいる顧客、または営業時間外に問い合わせをしようとしている顧客の顧客体験を心に留めておくことが大切です。